暮らしの覚え書き

古典やいろいろなお話が好きです。妖怪や伝統行事も気になります。暮らしていく中で、ふと心にのぼったあれやこれやを書いていきます。

お話紹介 『宇治拾遺物語』① 

宇治拾遺物語』の中で、気になったお話だけですが、概要を少しずつ記して行きます。

※ 漢数字は、『宇治拾遺物語』の中で、第何話めかを表しています。

※ 概要は、《あらすじ》《覚え書き》です。

《覚え書き》には、ふと思ったことや気に留めたこと、マメ知識などをメモ的に書いています。根拠は、あったりなかったりです。

 

三 鬼に瘤取らるる事

 

※題で使われている「瘤」の字は、「やまいだれ」の中は、「留」ではなく、「嬰」です。

 

《あらすじ》

右の頬に大きな瘤(こぶ)のあるおじいさんがいました。薪(たきぎ)をとって、暮らしていました。ある日いつもと同じように山へ出かけていきました。しかし、暴風雨に見舞われ仕方がないので、木の洞穴で雨宿りをしておりました。

 

そこへ、鬼どもがやって来て、宴会が始まります。余興で、下座の鬼から次々と舞を披露します。おじいさんは、隠れて見ていましたが、どうしも自分も舞ってみたくなり、死んでも良いと思い鬼たちの前に飛び出すと、舞を披露しました。

 

鬼たちは、おじいさんの舞をすっかり気に入ってしまいました。そして、おじいさんに次の宴会の時も必ずくるんだぞ、と申しつけます。そして、おじいさんの瘤を取ると、「来なければ、この瘤を返してやらなぬぞ」と言いました。

 

隣に住むおじいさんは、左の頬に大きな瘤がありました。どうやって、瘤を取ってもらったのかを教えてもらうと、自分も同じようにして瘤を取ってもらおうと考え、鬼の宴会の日に、木の洞穴に入り隠れていました。鬼たちがやって来て宴会を始めると、おじいさんは、洞穴から飛び出します。そして、一生懸命に舞って見せました。しかし、このおじいさんは上手に舞うことができませんでした。

 

鬼たちはがっかりして、前に取っておいた瘤を「前に取っておいた瘤を返してやるよ。」と言うと、このおじいさんの左の頬につけてしまいました。

 

こうして、隣に住んでいるおじいさんは、両方の頬に瘤のあるおじいさんになってしまいましたとさ。

 

《覚え書き》

宇治拾遺物語』(鎌倉時代成立)に載せられている形が、「瘤取りじいさん」の最古とのこと。※鎌倉時代に成立した「五常内義抄(ごじょうないぎしょう)」という説話集にも載っているらしい。

 

☆ 人のことをうらやましく感じて、真似をしてみるが、うまくいかない。よくある。

 

☆ 時として、芸は身を助ける。

 

十二 児(ちご)の掻餅(かいもちひ)するに空寝(そらね)したる事

 

※「児」は、寺社で、召し使われた少年。「掻餅」は、ぼた餅、おはぎ、そばがき。

※掻は、又の部分、中に点が付く。脇にも点が付く。

 

《あらすじ》

比叡山のお寺に奉公している少年がおりました。夜になり何もすることがなく暇になったので、僧たちは、ぼた餅を作り始めました。少年は寝たふりをしています。ぼた餅ができあがると僧たちは、少年にぼた餅をたべさせようとして起こします。けれども少年は、一度呼ばれただけで起きるのは、格好悪いと思い、寝たふりを続けます。

 

僧たちは、寝ているのに起こすのは気の毒だと考えもう起こしてはくれませんでした。少年は、このままでは、ぼた餅がなくなってしまうと考え、起こされてからもう随分時間がたっていたのですが、「はい」と返事をしました。僧たちは、そんな少年の態度に大笑いし続けました。

 

《覚え書き》

☆ 我が身に置き換えて考えると、相当きまりが悪い。笑い話で済むのは、児だからか。僧たちのアイドル。

 

☆ 僧たちは、狸寝入りだと最初から気づいていたのでは?

 

十三の 田舎の児(ちご)、桜の散るを見て泣く事 

《あらすじ》

今となっては昔のお話なのですが。

 

田舎からやって来て、比叡山のお寺で修行をしている少年が、見事に咲いた桜の花に風が強く吹きつけているのを見てさめざめと泣いておりました。美しい桜の花が散っていくので少年は悲しく思っているのだな、と考えた僧が、なぐさめてやりました。

 

しかし、男の子が泣いていた理由はそうではありませんでした。風で桜の花が散るのなんか、どうでも良かったのです。強い風で、父が育てている麦の花が散ってしまい、実らなくなってしまうのではないかと心配して泣いていたのです。もちろん、僧は、そんな男の子の答えを聞いてがっかりしてしまいました。

 

《覚え書き》

☆ 児(少年)は、田舎の父の麦が実らなくなってしまうことが心配。けなげな孝行者と思うのは、的外れ。(現代的感想になってしまう)

 

☆ 僧としては、桜の花の散るのを悲しんで欲しかった。

 

☆ 美しい桜の花が長くも咲いておらずに、はかなく散っていく様子を、「素敵(すてき)」と平安時代の教養人は、感じていた。これを理解できないと、「田舎者」扱いされた。

 

 ◎ ひさかたの光のどけき春の日に静心(しづこころ)なく花の散るらむ 友則

  ※「古今和歌集 春歌下」 に採録されている紀友則(きのとものり)の歌。

 

要約すると、「陽光がのどかな春の日だというのに、桜の花は、落ち着いていましょうとも思わずに、どうして散っているのかな。」となる。こういう感じ方は、平安時代には、評価された。

 

☆ 桜の開花宣言は、各都道府県ごとに定められている標本木の桜が5~6輪咲くと出される。標本木は、原則としてソメイヨシノ。しかし、沖縄ではカンヒザクラ。北海道でも特に気温が低い地域では、エゾヤマザクラ。暑すぎても寒すぎても、ソメイヨシノがうまく根付かないため。

 

四十八 雀、報恩の事

※報恩は、恩に報いること。恩返し

 

《あらすじ》

どこかの子供が、雀に石を投げつけました。その石は雀に命中し、雀は腰の骨を折ってしまいました。その様子を見ていたおばあさんは、雀をかわいそうに思い、家で世話をしてやりました。何ヶ月もたつと、回復して元気になったので、放してやりました。

 

二十日ばかりすると、雀は瓢(ひさご)の種を一粒おばあさんに持ってきてくれました。おばあさんは、それを撒いて育てました。秋になると、大きな瓢がたくさんなりました。おかげで、家族だけでなく、村中の人々もたくさん食べることができました。また、乾燥させておいた七、八個の瓢からは、白米が出てきました。しかも、瓢は、空っぽにしたと思っても、また白米でいっぱいになるのでした。おかげで、おばあさんは、たいへんな富豪になりました。

 

さて、その様子を見ていた隣のおばあさんは、このおばあさんから事情を教えてもらうと、真似をします。まず、雀に石を投げつけ雀の腰の骨を折ります。そして、幾月か世話をし、回復して元気になると放してやりました。

 

十日ほどすると、雀は瓢(ひさこ)の種を持ってきてくれました。おばあさんは、種を撒き、育てました。すぐに、成長し、大きな実がなりました。おばあさんは、家族や村人にふるまい、自分もその実を食べました。しかし、実は苦く、しかも具合が悪くなってしまいました。仕方がないので、残った実は乾燥させておきました。

 

白米が出てくるだろうとおばあさんは、期待して、瓢を開けました。すると、中からは、虻、蜂、むかで、とかげ、蛇などが出てきて、おばあさんは、刺されて死んでしまいました。

 

《覚え書き》

☆ 「されば、物うらやみはすまじき事なり。」このお話の結びの言葉。「だから、人のことを羨ましがってはいけないのだよ。」

 

☆ 人のことをうらやましがってはいけない。←「瘤取りじいさん」と同じ教え

 

☆「腰折雀」は、「舌切雀」(江戸時代頃から)の原型という説もある。

 

☆ 歳を取ることは、つらいこと。子供や孫に必要とされなくなってくる。もしかしたら、お荷物になるかも。(コワッ)

 

☆ なるべく役に立つ年寄りにならなければ。

 

☆ おばあさんは、ケガをしたスズメを可愛がっていると、最初は家族にバカにされた。しかし、スズメからの恩返しで、財産を成すと、尊敬されるようになる。←いつ世も、功利主義

※ 高橋貢 増古和子 (2018年 第1刷 発行)『宇治拾遺物語』上 全訳注 講談社 講談社学術文庫の解説を参考にして抱いた感想です。

 

☆ 隣のおばあさんは、「同じばあさんでも、隣のばあさんは役に立つ」と家族に言われてがんばる。だけど、失敗。

※高橋貢 増古和子 (2018年 第1刷 発行)『宇治拾遺物語』上 全訳注 講談社 講談社学術文庫の解説を参考にして抱いた感想です。

 

 

〔参考文献〕

★高橋貢 増古和子 (2018年 第1刷 発行)『宇治拾遺物語』上 全訳注 講談社 講談社学術文庫

文庫サイズですので、読みやすいシリーズです。